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セックスを明るい太陽の下にーリヒテルズ直子さんの講演に行ってきました

『0歳からはじまるオランダの性教育』の著者であり、長年オランダの教育について発信されているリヒテルズ直子さんの講演会に行ってきました。

オランダは世界で最も先進的な性教育をしている国で、エビデンスに基づいた国主導の性教育プログラムがなんと0歳から作られています。
その結果、低い中絶率・高い避妊率を誇り、全世界から注目されています。

今回のリヒテルズさんの講演は著書『0歳からのオランダの性教育』に沿った内容だったので、詳しくは本に書いてあるのですが、講演会のエッセンスを少々ご紹介します。

 

年齢別の性教育プログラム

0-3歳

まずは絵本です。オランダ人の家庭には最低1冊は性教育の絵本があるそうです。私も実際に友人がオランダに行った際に絵本の購入をお願いしたのですが、本屋さんには性教育の絵本コーナーがとても広く沢山の絵本があったとのこと。しかも、絵がかわいい本が沢山。子ども達が好きそうな色やイラストが満載で、内容はからだのしくみにとどまらず、愛の形には色々なものがあることが書かれていたりとにかく多彩です。

この時期にからだの各部の名称を性器も含めて言えるようになり、赤ちゃんがどこから来たのかも理解し、様々な種類の恋愛関係についても学びます。

4-6歳

この時期は3歳までにも触れてきた内容をより濃く学ぶ時期です。
赤ちゃんがどのようにしてお腹にできるか、育つのかも言い表せるようになります。

また、<嫌なことに対して「ノー」と言うこと><嫌なことは拒否していい>と学ぶ大事な時期です。

この「ノー」という力は、自分の体を守るうえでも、他人の体を傷つけないためにも大事な力であり、この時期から繰り返し教わっていきます。

6-9歳

この時期に性教育の基礎知識はすべて学びます。二次性徴・月経・射精・性交・妊娠・避妊などなど。まだ実際に体験する前の時期に、しっかりと知識を付けることが重要とされます。

9-12歳

ここからは「ノー」という力がより大事な時期になります。
SNSやインターネットと性についても学びます。
性的接触は必ずしも生殖目的だけではなく、喜びや快さのために大切であることも理解します。
そのうえで安全なセックスと危険なセックスについて考え、今の自分がどこまでやりたいと考えるか、どこからは嫌だと思うのかを理解し、嫌なことは「ノー」と伝える力をはぐくみます。

それ以降の性教育

それ以降も18歳まで性教育は続きます。具体的な避妊方法などはすでにここまでで学んでいるのですが、繰り返し復習を行います。
また、同性愛やさまざまな愛の形、宗教と性についても学びを深めます

 

教育方法

オランダでは性教育に限らず、様々な学習内容がテーマをもとにクラスで輪になり討論するという形で授業が進むそうです。

日本でのEテレにあたる教育チャンネルでも性教育が充実しているとのことで、性に関するありとあらゆるテーマに関する動画あるとのことです。
授業ではその動画を見て、皆で話し合っていくグループワークが主体。
受け身の授業ではなく、自分事として性教育を学んでいきます。

また性教育の題材のボードゲームも多数あるとのことで、楽しく学べる教材が揃っているようです。

 

障害児への性教育

障害者の性の権利をしっかりと認めているところが、さすがオランダと感じます。
視覚障害児には実物に似せた触覚の模型の教材。
聴覚障害児には「キス」「ペッティング」など、ひとつひとつの性の事柄にたいして説明する動画教材。
知的障害児には実物大の人形模型教材。(以前にバッシングにあった都立七尾養護学校の教材は素晴らしかったのですね。)
身体障害児は体のケアを幼少時から受けていることから、性被害に気が付きにくいためそれを啓蒙する教材。また、恋愛に臆病になる子が多いことから、同じ障害を持つ子ども同士で相談し合えるネットワーク作り。

 

性教育は市民教育

性的関係はひとりでは生まれません。性教育は他人と一緒に、互いに尊重し合う関係を築き上げる市民教育である、というリヒテルズさんの言葉がとても心に残りました。

オランダは売春も麻薬も合法であることからただただ自由な国と思われがちですが、法で禁止してもどうしても存在してしまう闇の部分を闇のまま放置するのではなく、そこに関わる人のからだや人権を守るために法で認めるという優しく成熟した国です。
オランダでは全ての市民の人権を守るために、性教育が存在しています。

世界的にも性教育は単なる性の話だけではなく、人間そのものを総合的にとらえた教育に変わろうという流れがあります。

日本の性教育はまだまだそこにたどり着くまで遠いですが、私たちが作る教材やワークショップなどがこどもたちの性教育のひとつの選択肢になるよう頑張ろう、という勇気をもらえました。